※本記事はゲーム本編のネタバレ満載です。クリアした人向けの記事なので、まだ未プレイで内容を知りたくない人はブラウザバックしてください。
いずれも推理や謎解き、トリックを語るうえでは欠かせない作品ばかりだ。
そして「アナザーコード リコレクション」だ。
筆者はニンテンドーダイレクトで発表されたトレーラーを観て、とてもアナザーコードに期待していた。
だが、そんな筆者の淡い期待は大きく裏切られる結果に。
このクオリティはさすがにひどい。
二作品収録されているとはいえ、この仕上がりで6,000円はいかがなものかと。
- 操作性の悪さ
- 圧倒的ボリューム不足
- やりごたえのない謎解き
などアナザーコードには不満だらけだが、なによりも納得がいかないのがシナリオだ。
公式では「推理小説を読むようにあなたが謎を解き明かす」とうたわれているが、ストーリーを完走したあとも謎ばかりが残っている。
とくにやりこみ要素がないストーリー重視のゲームであれば、
- 世界観
- キャラ設定
- 行動を裏づける動機
この3つはしっかり作り込んでほしかった。
主人公の「アシュレイ」や記憶がないおばけの「ディー」といったキャラが魅力的なだけに、惜しいゲームだったというのが正直な感想です。
それでは、記事本編に興味のある方はどうぞ。
2つの記憶編のシナリオや設定の不満点と改善点
2つの記憶編におけるシナリオ自体は悪くないと思います。
アシュレイがビルではなく、本当に父親であるリチャードに出会えたシーンや、ディーの胸の模様が自分を助けようとしたヘンリーおじさんの手だったというシーンには、心を動かされた。
ただ私が問題視しているのは、登場人物の行動における動機がほとんど不明な点です。
アシュレイの両親がアナザーの研究に没頭していた理由
たとえば、アシュレイの両親がアナザーの研究に没頭している理由。
「アナザーによって人々が戦争や事故で負ったつらい経験や記憶を消す」といった大義を掲げていたようだが、その目的に至ったいきさつや動機の説明がまったくない。
挙句の果てには、3歳の娘をなんの説明もなしに妹に何十年も預けるという暴挙に走る始末。
プレイヤーとしては、リチャードがアシュレイをジェシカに預け、自身を死んだことにしてまでアナザーの研究を続けなければならない理由が分からなかった。
しかも11年研究開発をつづけてようやく完成したアナザーを、いともカンタンにぶっ壊すし。
率直な感想として、「そんな簡単にアナザーを手放せるんなら、最初から3歳のアシュレイと一緒に暮らしておけばよくね」と興ざめしました。
たとえばアナザーを研究する動機として、アシュレイがつらい過去に悩まされて日常生活にも支障をきたしているから、アナザーの記憶操作でアシュレイを救いたい、とかなら納得できる。
でも研究の動機がないから、ストーリーがしっくりこない。
ただ最終的に「お父さんとジェシカが助かってハッピー」みたいな浅い印象しか残りません。
ビルがサヨコを銃殺した理由
アナザーの研究員であるビルにサヨコが銃殺された理由も、まったくもって意味が分からない。
本編では「サヨコがアナザーの論文を持ち逃げして隠したから」という理由でビルは銃を撃った。
いや、論文を隠されているのに、隠した本人を銃殺しちゃダメでしょう…。
そもそも、サヨコがアナザーの論文を隠した理由も説明がない。
これだけ聞くと、組織を裏切ってアナザーを持ち逃げしたサヨコの自業自得みたいに思えるんですよね。
たとえば論文隠しの動機として、研究員であるビルが私利私欲のためにアナザーを悪用する計画を企てており、計画に気づいたサヨコが論文を持ち去ったとする。
そうすれば、計画をつぶされたくないビルに撃たれた理由ともつじつまが合う。
でもなにも描写や説明がないから、サヨコはただ「論文を隠して撃たれた女」という印象しかない。
で、そこまでして守りたかったアナザーを、リチャードがあっさりと「ドカン」です。
もう笑うしかない。
ビルがアナザーを奪おうとした理由
ビルはリチャードのふりをしてアシュレイにアナザーキーを回収させ、アナザーを起動させた。
そして起動させたアナザーのデータを「誰か」に転送する描写がある。
ビル本人は「金のためにアナザーを売る」「アナザーの力を利用したい人はごまんといる」といっていた。
で、アナザーを奪う理由について説明もないまま、ビルは奈落の底へとしずんでいく。
リチャードはビルに対し「君はアナザーを悪用するために研究していたとは思えない」と、ビルがかつては善意を持って研究に臨んでいたことも示唆していた。
でも結局ビルが、
- どうしてアナザーを奪う結論に至ったのか
- だれにアナザーのデータを売り飛ばしたのか
という2つの行動をとった動機や目的がわからないから、まったく釈然としない。
せめて、
- 記憶操作で世界を牛耳るため
- 莫大なお金を独り占めするため
- アナザーの脅威を感じて破壊するため(危険すぎる、存在してはいけない、みたいな)
みたいな目的があれば、アナザーを奪ったことにも納得できたのに…。
ビルがリチャードを生かしていた理由
ビルはようやく完成したアナザーを、リチャードから奪うことに成功した。
一方のアシュレイは、地下研究施設に閉じ込められていた本物の父親、リチャードと再会することができた。
ビルによるアナザーの悪用に気づいたリチャードは、アナザーの制御装置に向かう。
アナザーはすでに起動されており、ビルがどこかにアナザーのデータを転送しているようだ。
で、ここで一つの疑問が残る。
「なんでビルはリチャードをみすみす生かしているの?」という疑問が。
なぜなら、ビルの目的がアナザーを売り飛ばして金儲けをすることだとしたら、アナザーの起動に成功してデータを転送可能になった段階で、リチャードは用済みだからだ。
リチャードを消したほうが、アナザー転送のジャマをされるリスクもない。
たとえば、アナザーの起動にリチャード自身やアシュレイの持つDASが必要とかなら、生かしていた理由も納得できる。
もしくは、アナザーの力でリチャードにサヨコを撃った記憶を定着させ、罪を着せることで、ビル自身は罪から逃れるためだったとか。
だが、ふたを開けてみれば「とりあえず親子を再会させるためにリチャードを閉じ込めておきました」みたいな謎展開。
よっぽどビルのアナザー奪取計画がずさんなのでしょうか…。
ビルがサヨコの墓参りをしていた理由
論文隠しをとがめるために、サヨコを銃殺したビル。
そんなビルは、深刻そうな面持ちでサヨコの墓参りをしていたという。
ビルはサヨコが好きだったのか、それともアナザーや組織のためとはいえ、人を殺めたことに対して良心が痛んだのか。
「墓参りをしていた」という描写しかないから、これも動機がまったく分からない。
ビル=フラニーの息子という設定
7章の終盤で、ビルの手帳から家族写真が見つかる。
その写真にうつっていたのは、笑顔を向ける婦人と幼少期のビル。
そばにいたディーが「この女の人はフラニーだよ」という。
ビルは、ディーのかつての友達だったフラニーの息子だった。
だが、ここで「その設定要る?」という疑問が残る。
2つの記憶編のストーリー上、ビルがフラニーの息子である必然性がまったくないからだ。
仮にビルがアナザーを奪う動機として、フラニーの存在が絡んでいたならまだわかる。
たとえば、フラニーがディー(ダニエル)を亡くしたことで気を病んだ母を救うためとか、母の病気を治すために巨額の資金が必要とか。
それならフラニーの息子という設定にも必然性があるし、「ビルにも大義があったんだな」とキャラクターに感情移入することもできたはず。
でも実際のビルは、ただフラニーの息子という設定があたえられた金の亡者という印象しか残りません。
ローレンスの遺言状の真意
物語の舞台である屋敷の主、ローレンス。おばけのディーの曾祖父にあたる人物である。
このローレンスが書いた「財産のすべてを孫のトーマスに譲る」という遺言状によって、もうひとりの孫・ヘンリーが財産目当てでトーマスを銃殺した。
結果的にヘンリーがトーマスを銃殺する現場をディー(ダニエル)が目撃したことによって、ディーは命を落とすことになるわけだが、ここでも疑問が残る。
なぜローレンスはトーマスだけに財産を相続することにしたのか。
この遺言状の真意についても、本編でまったく説明がない。
しかもローレンス本人や執事が残した日記には「ローレンスは二人の孫を心から愛している」みたいなことが書かれている。
当初よりローレンスがトーマスをひいきにしていたとか、ヘンリーがずっと財産をつけねらっていた描写があるとかなら、ヘンリーに遺産を渡さない理由も納得できる。
でもなんで遺産をトーマスだけに譲ることにしたのか、いきさつも理由もわからないから筆者は「?」でした。
ローレンスがふたりの孫に遺産を分配していれば、トーマスもダニエルも死なずに済んだのに…。
だから、せいぜい「トーマスかわいそう」「巻き添え食らったディーもかわいそう」くらいの印象しか残らない。
ディーが履いていた靴のゆくえ
トーマスの殺人現場を目撃したディー(ダニエル)は、こわくなってその場から逃げます。
ディーに現場を見られたことに気づいたヘンリーは、ディーを追跡しました。
洞窟までディーが逃げたとき、靴が片方脱げてしまう。それでもなりふり構わず、ヘンリーから逃げます。
その後、崖まで追い詰められたディーは、足を滑らせて奈落の底にしずみ、命を落としてしまいました。
ここで問題です。ディーの片方の靴は洞窟に落ちています。ではもう一方の靴はどこにあるでしょうか?
本来であれば、ディーの遺体とともに奈落の底にあるはず。
しかし、なぜかトーマスがロックをしていたトランクの中に、ディーのもう一方の靴が入っているんです。
…?????
ディーはもともと、片方しか靴を履いていなかったの?
だとしても、なんで息子の靴を片方だけ大事にトランクに保管してるの?
ディーは大人には視えないという設定
ディーは大人には視えず、50年以上も屋敷の敷地内をさまよっていたという。
50年のあいだにリチャードやビル、ジェシカといった大人と遭遇したものの、ディーの姿を視えた人はいなかった。
その後、屋敷に訪れたアシュレイだけは、ディーの姿を視ることができた。
本音を言うと、アシュレイにしかディーの姿が視えなかった理由もあれば、物語の深みがグッと増したはずだ。
まあそれは置いておいて、ディーの設定に釈然としない理由はほかにある。
ディーは大人には視えないはずなのに、
- アシュレイとリチャードに銃を向けたビルをディーが制止するシーン
- 洞窟を抜けた先の入り江で船長が「友達か?」とアシュレイに尋ねるシーン
このふたつのシーンだけ、大人である「船長」「ビル」になぜかディーの姿が視えているからだ。
ディーはずっとアシュレイにそばにいたにもかかわらず。
例によって、なにも説明や補足がないから、筆者は
「え?なんでこのシーンだけディーの姿が視えたの?」
「都合がよすぎない?」
という印象しかないんです。
たとえば、
- ビルはフラニーの息子という事実にディーが気づいていた
- 友達だったフラニーの息子にこれ以上悪行を重ねてほしくないというディーの思いがあった
- そんなディーの強い思いがとどいて一瞬だけビルにディーの姿が視えた
みたいな筋の通った理屈のひとつでもあれば、筆者は「なるほどね~」と思えた。
ローレンスの屋敷の仕掛け
ローレンスの執事であったウェルズの日記には、こんなようなことが書いてあった。
- 財産を手に入れたローレンスは、自身に近づいてくる人間がすべて金目当てに見えて、人間不信に陥った
- 屋敷にはローレンスの身内しか入ることを許可せず、侵入者を阻むトラップを仕掛けていた
…???
そんな仕掛けなどなく、当たり前のようにリチャードやアシュレイ、ビルが自由に散策していましたけど…。
なんなら、中庭から西棟・東棟につながるトビラは、中庭側にサムターン(鍵を開けるつまみ)が付いていました。
サムターンの向きが中庭側とか、屋敷内に侵入してくれといっているようなもんです。
仕掛けうんぬんというメモを残すのであれば、解除できなかったらアシュレイが死んでゲームオーバーになる謎解きやトラップがあれば楽しかったのに…。
リチャードが島に来たタイミングで、仕掛けをすべて取っ払ったんですかね。
システム面での不満点と改善点
アナザーコード リコレクションはストーリーのみならず、システム面でも不満点が目立ちます。
カメラの操作性
とくに気になったのが、キャラクターのカメラアングル。
まずキャラクターに対してカメラの位置が近すぎる。
アシュレイがゲーム画面のおよそ半分を占有しているため、周囲を見渡しにくい。
謎解きのために周囲のオブジェやアイテムを捜索しなくてはならないゲームなのに、見渡しにくくてストレスがたまります。
カメラの位置を調整できるようにするか、いっそ引きのアングル固定だったらよかった。
あと、カメラの視点を切り替えるときの挙動が「スロー⇒急加速」なのも気になった。
カメラの妙な挙動のせいで、ねらった位置に視点を合わせにくいのもストレス。
ふつうに右スティックの入力にあわせて、一定の速度でカメラアングルが切り替わる仕様でよかったのに。
アイテムの組み合わせ機能
ローレンスの部屋に入るときに必要な「四葉の鍵」。
四葉の鍵は、金の鳥の間、銀の鳥の間の鍵である双葉の鍵①と②を組み合わせることで完成します。
なんとアイテムの組み合わせ機能は、この四葉の鍵をつくるためだけに存在するシステムなんです。
ローレンスの部屋の鍵を開ける場面でしか使わない機能なら、わざわざ実装しなくてもよかったのでは…?
ローレンスの部屋は2つの鍵を使わないと開きません、でも違和感はなかったはず。
しかも、ただの13歳の少女が2つの鍵を物理的に合成しているのも、世界観とマッチしてない。
アシュレイは錬金術師なんでしょうか。
2枚の写真を重ねる機能
DASで撮影した写真には、2枚の写真同士を重ねる機能があります。
写真を重ねる機能も、ピアノの楽譜とハミングバードの肖像画に書かれた五線譜を書き写すためだけに存在している。
別になくても構わない機能ですが、せっかく実装するならピアノ楽譜と同じようなギミックを増やしてもよかったのでは…。
しかも、写真同士を重ねる機能があることをチュートリアルで教えてくれるわけでもありません。
筆者はピアノを弾く謎解きがわからなくて、さんざん悩んだ挙句、そのときにはじめて「写真同士を重ねる機能」があることを知りました。
筆者のアタマの硬さはさておき、事前にDASの機能を紹介してくれてもよくない…!?
リチャードのメモ(折り鶴)のスキャン
屋敷の各部屋に散りばめられた折り鶴をDASのカメラでスキャンすることで、リチャードが記したメモを読むことができます。
まあ折り鶴の存在自体は、物語への理解を深めるために必要だと思います。
しかし問題なのは、折り鶴をカメラでスキャンして、そのままメモの内容を読めないこと。
メモの内容を読むためには、
- いちどカメラ機能を停止する
- DASの左端の画面までスクロールする
- スキャンしたメモを選択して読む
という手順をいちいち踏まなければならない。
折り鶴は2つの記憶編だけでも14個あるので、スキャンするたびに上記の操作をする必要がある。
ほんとうにめんどくさかった。
必要性を感じない「アイテムの組合わせ機能」や「写真を重ねる機能」を実装するくらいなら、スキャンしたメモをそのまま読めるショートカット機能のほうがありがたい。
ゲームボリュームの圧倒的な少なさ
アナザーコード リコレクションは、いわゆる「お使いゲー」といわれるタイプのゲーム。
誰かの指示通りにあっちへ行ったり、こっちへ行ったりを繰り返し、目的を達成することでストーリーが進行するシステムです。
アナザーコードは、一本道のストーリーで構成されたお使いゲー要素にくわえ、
- 収集品コンプ
- サブミッション
- サイドストーリー
といったやり込みや寄り道要素がなにもありません。
その結果、筆者が2つの記憶編のストーリークリアに要した時間はおよそ10時間。
さすがにボリューム不足すぎない…?このゲーム、新品で6,000円ですよ…?
推理小説を1,000円で買って読んでいたほうが、長く楽しめるのはないでしょうか。
おわりに
以上、アナザーコード リコレクションの不満点や改善点をのべた記事でした。
アナザーコード自体は、
- 魅力的なキャラクター
- 謎解きをして物語を進めるゲーム性
など、いいところもたくさんあるソフトです。
でもツッコミどころがありすぎて、アナザーコードの魅力を相殺している印象。
もしアナザーコードの次回作があるとしたら、ストーリーやシステム面が改善されていることを願っています。
なお、本記事の内容は筆者個人のただの感想でしかありません。
みなさんの反論や意見、別の考察があれば、ぜひコメントで教えてください。